Monthly Archives: 4月 2021
最近は、相続登記の義務化に関する話題を出してきましたが
今回は趣向を変えて、長期相続登記等未了土地について話していきたいと思います。
そもそも「長期相続登記等未了土地」とは何ぞやという話ですが
簡単に言えば、地方公共団体等の要請に基づいて、登記官が土地の所有者を調査した結果、当該土地の所有者が死亡してから30年以上経過していることが判明し、当該土地の登記記録に「長期相続登記等未了土地」の付記登記がなされたものを指します。
この登記がなされると、土地の所有者の相続人のうちの一人に、長期間相続登記がなされていない旨の通知が法務局より届くことになっております。
現在の法体系の下では、権利に関する登記(相続登記など)は申請する者の意思に委ねられています。すなわち、不動産の売買をしても、登記しなくても良いですし、ローンの弁済が終わって、銀行から抵当権の抹消書類を渡されても、登記をする義務はありません。(もちろんしない事の不利益は自分が受けることになりますが)
しかしながら、相続登記をしない人が、立法者の予想よりもはるかに多かったのか、現在、九州の面積に匹敵する土地の所有者が分かっていません。
そこで、現在、相続登記の義務化の話が出てきている訳ですが、所有者不明土地の解消作業の一環で、登記官が調査を行う「長期相続登記等未了土地」の制度も行われています。
では、長期相続登記等未了土地の登記がなされるとどの様な効果が生じるのかについてですが
まず、先ほど説明した通り、①法務局から長期間相続登記がなされていない旨の通知が送られてきます。どういう基準で誰に送られるのか不明ですが、恐らく被相続人に近い人であって、不動産から近い方にお送りしているのではないかと予想します。
①の書類が届いた後、相続人がその書面をもって法務局へ行き、手数料を収めれば、②法定相続情報を取得することができます。これは、相続登記の際の戸籍や住民票の代わりになるものであり、実際の登記手続きでも使用可能です。また、住所が記載されているため、他の相続人へ連絡を取ることも可能となっております。
つまり、最大のメリットは、登記手続きにおける戸籍集めをしなくても良いということです。
以上、長期相続登記等未了土地に関する説明を行いましたが、個人的には気になる点もあります。
まず、「戸籍集めをしなくても良い」という点について
明治時代の相続手続きを行う際、場合によっては戸籍の費用だけで5万円程かかる可能性があります。もちろん交通費や手間を考えれば、それ以上の負担になる可能性があります。この費用負担を相続登記をしなかった者が享受できるというのは、どうなのでしょうか?真面目に登録免許税を支払った国民に対してメリットがないのでは無いかと思えなくもないです。もちろん誘導行政の一種だと言われればそれまでなのですけどね
また、相続人間で適切なやりとりができるのかという点も気になります。「住所が記載されているため、他の相続人へ連絡を取ることも可能」と上記に記載しましたが、実際にそこに居住している保証もありませんし、手紙を送っても返送されない可能性もあります。場合によっては「住所 アメリカ合衆国」ということもあり得ます。すなわち、これによって相続手続きが円滑に進むかというと、必ずしもそうではなく、難しい場合があるということです。
最後に、どれくらいの相続人が、登記をするのかという点です。長期相続登記等未了土地は地方公共団体の要請によって、登記官が調査するという関係上、長期相続登記等未了土地とは地方公共団体が最も登記してほしい土地であるということが考えられます。それはすなわち、まちづくりにおいて何らかの処理が必要な土地であることが考えられます。それが道路の拡幅工事なのか、崖崩れ防止の為の土地なのかは分かりませんが、不動産価格が高額でない土地が対象となっている可能性があります。そのような土地の為に手間を惜しんで、登記をするのかというのが気になっている点であり、円滑な相続登記を求めるのであれば、より充実した誘導行政が必要なのではと感じる部分ではあります。
話をまとめると
相続登記にかかる費用を国が負担すれば、もっと登記をして貰えると思いますがどうでしょうか?法務省さん!
という話でした(´・ω・`)
さらに発展して司法書士報酬の補助とか出せば、他士業とかもこっそり参入してカオスな事になりそうですけどね
まぁ、不動産登記制度の本来の趣旨からいってもあり得ない話なんですが、この話は不動産の登録免許税の話で解説しましょう
それではまた
前回の投稿から時間が少し空きましたが元気にしております。
さて、改めて相続登記が義務化された時の未来予想でもしたいと思います。
今回も、司法書士の独り言ですので、あまり真に受けないで下さいね。(´・ω・`)
今回の予想は「登記事項証明書が分厚くなる」
登記事項証明書とは、不動産の証明書に当たるもので、人間で言うところの戸籍のような存在になります。
因みに、この証明書は、一定の手数料を収めることで誰でも閲覧することが可能です。
登記事項証明書には様々なことが記載されていますが、ざっくりと説明すると、種類や面積が記載された①表題部と、不動産の所有者や担保権者の情報が記載された②権利部があり、権利部はさらに、所有権に関する事項が記載された甲区と、それ以外の権利の事項が記載された乙区があります。
では、何故これが将来的に分厚くなるのかというと、登記事項証明書の分厚さは、その不動産になされた登記の回数によって増加していくものであり、それが、相続登記の義務化より、急激に増加する可能性があるからです。
例えば、甲土地を所有するPさんが死亡して、その相続人がA、B、Cの三人だったとします。
この場合、司法書士が関与していて、相続人間で争いが無ければ、99%単独所有の名義にします。つまり、仮にAが所有者になるという場合は、PからA名義に相続手続きを行います。
そして、この時、登記事項証明書には、Pが甲土地を取得した次の順位番号で、A名義の所有権移転がなされることに成ります。
人によっては上記の流れが当然だと思うかも知れませんが、別のパターンも存在します。
例えば、乙土地を所有するQさんが死亡して、その相続人がA、B、Cの三人だったとします。
この場合、相続人間で話がまとまらなければ、相続人は単独で、他の相続人を含めた相続登記を行うことが可能です。つまり、乙土地について、とりあえずA、B、Cの共有の名義にすることが可能なのです。
そして、登記事項証明書には、PからA、B、Cの共有名義の所有権移転登記が行われることとなり、A単独名義にするには別途登記手続きを行う必要があります。
現状の法制度では、権利に関する登記は任意であり、一度の手続きで終結する前者と異なり、後者の手続きにはメリットがあまりありません。
ところが、相続登記が義務化されれば、相続人が罰則を逃れるために、安易に後者の手続きを行い、権利関係が複雑化する可能性があります。
先ほどの乙土地の事例で言えば、PからA、B、Cの共有名義の所有権移転登記が行われた後、Aが死亡し、その相続人はD、Fであり、A持分についてD、F共有名義のA持分全部移転登記が行われた。その後Bが死亡し・・・。という事情が連続して発生すれば、単独名義にするための労力が増大しますし、争いの元になる可能性が高くなります。
ついでに言えば、これを単独所有にするために何度も登記を行えば、登記事項証明書は非常に複雑なものになり、かつ分厚くなるでしょう。
ちなみに、登記事項証明書は一定のページ数を超えると、値段が少し高くなります。紙資源の無駄になりますし、可能であれば、綺麗な登記事項証明書を維持したいですね。
分厚い登記事項証明書を見てみたいという方は、敷地権化されていないマンションの土地か、某食品の通信販売を営んでいた本社ビルの登記事項証明書を探してみてはいかがでしょうか? まぁ、見ても面白いものではありませんけどね。
今回のまとめとしては、安易に共有名義で登記するのはやめましょうということです。これは一時的な方法であり、根本的な解決策ではありません。
必ず、自分の代で問題を解決するという意思を持って行動してくださいね。
それではまた