最近は、相続登記の義務化に関する話題を出してきましたが
今回は趣向を変えて、長期相続登記等未了土地について話していきたいと思います。
そもそも「長期相続登記等未了土地」とは何ぞやという話ですが
簡単に言えば、地方公共団体等の要請に基づいて、登記官が土地の所有者を調査した結果、当該土地の所有者が死亡してから30年以上経過していることが判明し、当該土地の登記記録に「長期相続登記等未了土地」の付記登記がなされたものを指します。
この登記がなされると、土地の所有者の相続人のうちの一人に、長期間相続登記がなされていない旨の通知が法務局より届くことになっております。
現在の法体系の下では、権利に関する登記(相続登記など)は申請する者の意思に委ねられています。すなわち、不動産の売買をしても、登記しなくても良いですし、ローンの弁済が終わって、銀行から抵当権の抹消書類を渡されても、登記をする義務はありません。(もちろんしない事の不利益は自分が受けることになりますが)
しかしながら、相続登記をしない人が、立法者の予想よりもはるかに多かったのか、現在、九州の面積に匹敵する土地の所有者が分かっていません。
そこで、現在、相続登記の義務化の話が出てきている訳ですが、所有者不明土地の解消作業の一環で、登記官が調査を行う「長期相続登記等未了土地」の制度も行われています。
では、長期相続登記等未了土地の登記がなされるとどの様な効果が生じるのかについてですが
まず、先ほど説明した通り、①法務局から長期間相続登記がなされていない旨の通知が送られてきます。どういう基準で誰に送られるのか不明ですが、恐らく被相続人に近い人であって、不動産から近い方にお送りしているのではないかと予想します。
①の書類が届いた後、相続人がその書面をもって法務局へ行き、手数料を収めれば、②法定相続情報を取得することができます。これは、相続登記の際の戸籍や住民票の代わりになるものであり、実際の登記手続きでも使用可能です。また、住所が記載されているため、他の相続人へ連絡を取ることも可能となっております。
つまり、最大のメリットは、登記手続きにおける戸籍集めをしなくても良いということです。
以上、長期相続登記等未了土地に関する説明を行いましたが、個人的には気になる点もあります。
まず、「戸籍集めをしなくても良い」という点について
明治時代の相続手続きを行う際、場合によっては戸籍の費用だけで5万円程かかる可能性があります。もちろん交通費や手間を考えれば、それ以上の負担になる可能性があります。この費用負担を相続登記をしなかった者が享受できるというのは、どうなのでしょうか?真面目に登録免許税を支払った国民に対してメリットがないのでは無いかと思えなくもないです。もちろん誘導行政の一種だと言われればそれまでなのですけどね
また、相続人間で適切なやりとりができるのかという点も気になります。「住所が記載されているため、他の相続人へ連絡を取ることも可能」と上記に記載しましたが、実際にそこに居住している保証もありませんし、手紙を送っても返送されない可能性もあります。場合によっては「住所 アメリカ合衆国」ということもあり得ます。すなわち、これによって相続手続きが円滑に進むかというと、必ずしもそうではなく、難しい場合があるということです。
最後に、どれくらいの相続人が、登記をするのかという点です。長期相続登記等未了土地は地方公共団体の要請によって、登記官が調査するという関係上、長期相続登記等未了土地とは地方公共団体が最も登記してほしい土地であるということが考えられます。それはすなわち、まちづくりにおいて何らかの処理が必要な土地であることが考えられます。それが道路の拡幅工事なのか、崖崩れ防止の為の土地なのかは分かりませんが、不動産価格が高額でない土地が対象となっている可能性があります。そのような土地の為に手間を惜しんで、登記をするのかというのが気になっている点であり、円滑な相続登記を求めるのであれば、より充実した誘導行政が必要なのではと感じる部分ではあります。
話をまとめると
相続登記にかかる費用を国が負担すれば、もっと登記をして貰えると思いますがどうでしょうか?法務省さん!
という話でした(´・ω・`)
さらに発展して司法書士報酬の補助とか出せば、他士業とかもこっそり参入してカオスな事になりそうですけどね
まぁ、不動産登記制度の本来の趣旨からいってもあり得ない話なんですが、この話は不動産の登録免許税の話で解説しましょう
それではまた